【NEWS】2022.4.7 UPDATE / 「陸前高田市ピーカンナッツ産業振興施設」の建物部分が完成し、外構工事がスタートしました!

施設建物部分が、一昨年の設計プロポの時のコンセプトをキープしたまま、イメージ通りに完成しました。プロポで提案した仕様から予算の都合上、各種仕様を変更する必要が生じ、岩手県産材のアカマツの無垢板張りとしていた扇形の天井は、アカマツの合板張りへ変更になりました。扇形は、30×30の化粧垂木を打ち付けることで維持できました。扇形天井下の空間は、上部のハイサイドライトから光が差し込み、ダイナミックで厳かさも感じられます。

床から全面ガラスであった外周部は、高さ1.8mで、多方向に開かれたまま、床から高さ40cmの腰壁が立ち上がりました。垂れ壁もその高さまでおりてきます。場所によっては天井が高いため、窓の大きさがしぼられているようにも見え、そのことで外の風景がピクチャーウィンドウのように切り取られて見えます。外の景色に自然と目がいくような空間になりました。

構造架構についても、予算の都合上、仕様の再検討を行う必要が生じ、多目的スペースをラーメン構造からブレース構造へ変更し、鉄骨量を大幅に減らすことができました。キッチンスタジオと事務室のボリュームは、100角の無垢柱と、100×50のH型鋼で細かく構築した軸組で取り囲み、それを屋根まで伸ばし、耐震コアとしました。これにより内部空間は、鉄骨造でありながら、かつて気仙大工が作った伝統木造の小屋組架構を彷彿させるものとなりました。

この一年半陸前高田に通い、復興の現場に携わる方々と出会いました。一番印象が深かったのは、現場所長さん。当初は、陸前高田の地元の施工会社に、この複雑な建築をお願いすることに多少不安がありました。しかし、要望はすべてていねいに聞いていただき、ここまではできないけど、こういったやり方であればできる等、クリエイティブな発想で進めていただきました。
打ち上げの夜、「これまでやったどの設計事務所よりも、設計者と施工者が一緒に同じ方向を見てやることができた現場だった」と仰ってくださり、感無量です。

また、陸前高田市役所からも、かつての経験では考えられないような側面援助をしていただきました。特に主任技師の方は、デザイン志向の建築にも理解が深く、柔軟に判断していただきました。

陸前高田の産業振興のシンボルとなる建築を作ることができたと思います。土地の求めるもの、人々の求める建築を私は目指していますので、今回の経験を糧として、さらに自分自身も前進していきたいと思います。

建築部分は3月に竣工し、6月末に外構工事が完了する予定です。工場の製造機器の搬入も始まっており、夏にオープン予定です。