【プロポーザル】2019 静岡県小山町 こども園 “金太郎の里こども園” 2位
金太郎ゆかりの静岡県小山町につくるこども園のプロポーザル。
敷地の背後にある里山を含めて、里山保育ができるこども園が求められた。私たちは美しい田んぼやあぜ道の形状を敷地内に部分的に残し、地盤の高低差を活かすことで、園舎や園庭が里山の一部分となるような提案をした。
園舎が多方向に拡がり、周囲とつながる保育を目指すため、建物は平面形状の基本単位を六角形としている。さらに、園児の生活空間は歳児別の専用部分となる「クラス」と、異年齢が行動によって自由に活動を行う「混合ルーム」で構成し、こどもたちが自由でのびのびと育つ空間を実現した。
構造は、経済性を考慮し、短い小径材の「金時材」を用いた。
2種類のツリー状ユニットが互いに支え合いながら、合理性に富んだ、魅力的で安全な空間をかたちづくる。
小さな単位が寄り集まることで、地震に抵抗し、広がりのある構造システムを実現した。
また、大空間である遊戯室は、六角形平面の特徴を活かして「サスペンドーム構造」を採用することで、立体的な荷重伝達機構が形成され、長さの短い梁でも効率的に十分な体力と剛性を持つ大屋根が可能となった。
周辺環境について述べると、里山周辺の小道を簡易整備し、等高線に沿った平坦な管理車路の整備を計画している。里山の中には、作業用のスペースとしていくつかの平場を設け、自生する植物や地形の状況に応じた、魅力的な利活用の方法を提案する予定である。平場同士を緩やかな傾斜路でつなぎ、園児でも容易に登れるようにし、運動のプログラムの一つとして「里山さんぽ」が可能な計画としている。のびのびと外で駆け回って、自然に触れたり観察することが、こどもの生きる力の源をつくる。
私たちの計画では、整備しすぎず、自然の余白を残しながら段階的に利活用を進めていくものである。そうした日本一の里山保育ができるこども園を提案した。
*高橋茂弥建築設計事務所との共同設計