【展覧会】SDレビュー2018 奨励賞 「石と屋根 小さなホテルとワイナリー」

©玉利康延
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【石のラウンジ】
建築用途:ホテル
階数:地上1階
主体構造:鉄骨造
建築面積:395㎡
延床面積:268㎡
建設地:神奈川県小田原市

【石のワイナリー】
建築用途:ワイナリー
階数:地上1階
主体構造:鉄骨造
建築面積:265㎡
延床面積:100㎡
建設地:神奈川県小田原市

海と山に囲まれた、かつての石切場。
「この場所を活かすにはどうすれば良いか?」
それが地主さんから私たちへの問いでした。

古来より石材は良質なものをわざわざ遠方より運搬して用いるほど、貴重なものでした。
しかしまた、石の価値は、ほとんどが運搬費用といわれるほどであり、今日では高価な建築資材となっています。

根府川は、日本有数の良質な安山岩「根府川石」の産地です。これを活かさない手はありません。私たちはこの場所に、様々な形の新たな生業をつくり、この土地だからこそできる建築をつくります。

ひとつは、暮らすように宿る、滞在型の小さなホテル。
この地域に点在するみかんの段々畑と、百姓積みと呼ばれる石垣を建築言語として、その高低差を利用しながら客室と「石のラウンジ」を配置します。

「石のラウンジ」は、段差と石の重量をうまく使いながら、眼下に広がる海への眺望を柱で遮ることのないよう、やじろべえ型のキャンチレバー屋根としています。ここを拠点として、宿泊者は敷地周辺を散策し畑仕事を手伝います。

もうひとつは、地域経済の再活性化を目指す「石のワイナリー」。
耕作放棄地となっているみかん畑をぶどう畑に転用し、地域に根ざしたワイナリーをつくり、雇用の促進と観光資源の創出を図ります。「石のワイナリー」は、この石切場の発生石材をそのまま屋根材や壁材として再利用した石蔵です。この土地の石が、熟成に最適な室温と湿度をつくりだし、おいしいワインづくりに貢献します。

これらを中心としてこの地域全体の魅力を引き出すこと、それを私たちは模索し続けます。