【WORKS】森の書庫と離れ
























用途: 書庫・離れ
工事期間:2023年3月〜2024年11月
階数:地上1階
主体構造:木造
延床面積: 書庫 26.6㎡ 離れ 21.4㎡
建設地:千葉県
千葉県いすみ市の小さな山の頂上に、1万冊の本を収容する書庫と離れをつくった。私の父がこの地に山荘を購入したのは、40年ほど前のこと。週末に通い果樹の手入れをしながら、毎月友人を招待し季節の恵みを楽しんできた。そんな思い入れの深い場所に、父がライフワークとして収集した本をアーカイブとして残したいと願い、書庫をつくるに至った。
また、私は学生時代からこれまで作成したすべての模型を父の山荘に収納していたが、いよいよ手狭になり、書庫の隣に建築模型を納める離れを同時につくらせてもらうことになった。
書庫に納める本は専門書が多いので、将来的には小さな図書館として研究者や地域の方たちに開放したいと考えている。また、離れも見せる倉庫として、訪れた方に建築模型を自由に眺めてもらう場所にする予定である。
山荘の周辺は空き家が多く、深刻な過疎化が進んでいる。そんな、ただでさえ人が寄り付かなさそうな場所に書庫と離れをつくる。このテーマにどう向き合うのか。
書庫は、この地に訪れたくなる動機付けのひとつとして、みんなが見に行きたくなるような特徴的なかたちの建物を提案した。
コンパクトなスペースの中にできる限りたくさんの本が置けるよう、ジグザグの壁を巻貝のように囲い込み外壁の周長をかせぎ、内部に小さな閲覧スペースを設けた。
昔からの隣人で大工の峯島さんに図面を見せた際、このようなかたちはとてもつくれないと言われたが、3Dを駆使したプレカットなど先端技術を上手く用いることで、峯島さんがつくれる工法を実現させた。
敷地は鬱蒼とした森の中であるが、かろうじて樹上から光が差し込んでくる。極力直射日光を本に当てないために開口部は2枚の屋根をずらし、ハイサイドライトからの光のみを取り入れるようにした。内部の約6mのスパンは鉄骨のトラスで飛ばしている。この屋根形状を実現するためには、野地板を放射状に張れるように登り梁の天端をすべて異なる角度で斜めカットする必要がある。3D加工機でプレカットを行うことで、複雑な形状もスムーズに加工することができた。ハイサイドライトは、山の中へも搬入がしやすく耐候性、耐久性に優れたETFEフィルムを用いた。外壁は敷地の山の土を用いて20人のボランティアと一緒にワークショップ形式で塗り込んだ。伐採期限が過ぎている現地のスギ林を、この機会に数十本間伐し皮を剥ぎ、スギ皮を外壁の一部に張り付けた。
高機能素材から現代では用いない旧来の素材まで、その都度試行錯誤しながら施工してくださった峯島さん。たとえばスギ皮を剥ぐ技術は、この地域ではもう峯島さんしかできないそうだ。難しいところは3Dプレカットで補いつつ、峯島さんの技術を取り込んでいく。現代技術と峯島さんの緻密な手仕事の掛け合わせによって「最先端ローカル」建築が生まれていった。この小さな建築を通して、私は地方と都市の新たな関係性を構築できる可能性を感じた。
