【WORKS】床と光の家

©Kai Nakamura

建築用途:専用住宅
工事期間:2020年9月〜2021年3月
階数:地上2階
主体構造:木造
建築面積:57.93㎡
延床面積:86.57㎡
建設地:千葉県

夫婦と子供の3人家族の住まいである。敷地は、千葉県八千代市のニュータウンの一角。最近まで畑や林などが残っていた地域で、周囲はまだ更地が広がる。夫は家全体がワンルームのように繋がり光に溢れた住まいを望み、妻は収納が多くプライバシーを保つことができる住まいを望んだ。両極端のリクエストを実現するため、立体的なワンルームとすることで地面と空を家の中に取り込み、環境と人とものの関係性を、床の段差によって構築した。

1階のほとんどは地面と連続した土間である。土間からコンクリートの基礎を伸ばして腰壁として現し、床高の異なるキッチン・ダイニングとリビングを土間を挟んで配置した。床の段差部を見せる収納として、土間と床の境界がものの居場所となる。土間から階段を8段上がると書斎スペースがあり、将来的には子共の電子ピアノが置かれる。さらに2段、4段の段差を上がったところにベッドがひとつずつ入る夫と妻の部屋があり、いちばん上の子どもの部屋へと続く。これら6つの床の段差は、5歳の息子にとっては格好の遊び場である。

今後周囲に住宅の建つことが予想されるので、開口部は外壁側に多く取らず、ミルフィーユ状に床と床の隙間を光の取り入れ口とし、外壁は、断熱性に優れたポリカーボネート中空板で帯状に覆うこととした。プライバシーを保ちながら、内部まで光が入る。また、人の背よりも高いところに透明なハイサイドライトを帯状に回し、通風と視線の抜けをつくった。リビングのソファから見上げると、折り重なる床の先に空が見える。高さの異なる6つの木の床とコンクリート土間は、平面的な広さとしてはコンパクトな家の中に、感覚的な距離を生む。これらが生活の中で展開されることで、家族の繋がりが床を媒介として一体となりつつ、のびのびとした広がりを感じさせる住宅とした。

『新建築住宅特集』2021年6月号 掲載