「陸前高田市ピーカンナッツ産業振興施設建築設計業務」プロポーザルで最優秀者に選定されました!
建築用途:工場、店舗、展示所
工事期間:2021年6月〜2022年5月
階数:地上1階
主体構造:鉄骨造
建築面積:約1,700㎡
延床面積:約1,700㎡
建設地:岩手県
東日本大震災の被災地である陸前高田市は、国内初のピーカンナッツ商業生産の基盤づくりと市場形成・流通基盤構築を進めている。
2017年度には東京大学、サロンドロワイヤル社との産官学連携協定を締結した。
本プロジェクトは、その魅力・食文化発信拠点としてピーカンナッツの加工・販売等を行う産業振興施設の計画である。
敷地は、本丸公園から続く「にぎわい軸」、主要幹線である「生活軸」、交通広場と敷地を結ぶ「駅への軸」という、陸前高田市の、重要な軸が重なり合う立地である。これらの軸に、南側へつながる「ピーカン畑の軸」、さらに広田湾を臨む「海への軸」をつなげた。かつて、陸前高田には山から海へつながる「まちの骨格」があったように、嵩上げエリアと広田湾との軸線を大切にしたいと考えた。海、畑、駅、町へと、多方向に開く、扇型の屋根を持つ建築である。
プランは、東隣の職業訓練校との間の広場に開き、北側の街の賑わいに向けたエントランスと並木のアプローチを設け、南側のピーカン畑に対しては、室内の階段ステージから、ピーカンテラスへ連続する開放的な空間とした。
平面計画は、キッチンスペースを中心とした店舗・多目的スペースがワンルームでつながり、軒下空間に沿いながらステージやテラス、併設するピーカンナッツ工場見学の動線へと緩やかに連続し、人々がのびのびと回遊できる空間となっている。
多目的スペースのステージは、デッキ材が外部まで連続し、南側の「ピーカンテラス」へ広がる。
店舗・多目的スペースのインテリアは、気仙杉を多用し、木の温かみのある空間とし、中央のキッチンスタジオは、陸前高田オリジナルチョコを製造したり、来訪者が見学・体験するスペースとなることで、施設の核となる。店舗からは、多目的スペースと遠景の山並みまで視線が抜け、大きく跳ね出した軒が風景を切り取る。
扇形に広がる木質天井が、人々の多様な活動を包み込む。歴史ある気仙大工の扇垂木をモチーフとした、力強く繊細な天井を持つ内部空間を目指している。
南側の外壁は、「なまこ壁」をモチーフとした、造作の木板外壁を考えた。隣接する職業訓練校の外観と調和し、コストとの調整を行いながら、陸前高田らしい外装仕上げとする。
工場の外壁は、基本的にはALC外壁とし、2種類のパネルを使い分け、表情のあるファサードとなる。
構造計画は、工場部分については、複雑な溶接や鉄骨加工の少ない、単一材の常時圧延H形鋼と、ターンバックル筋交いで構成された両方向ブレース構造とし、徹底した工期短縮と建設コスト縮減を実現する。店舗・多目的スペース部分は、放射/周方向の2方向に対する鉄骨ラーメン構造とすることで、必要十分な剛性と耐力を確保しながら、自由で開放的な空間を可能にする。
産業振興のシンボルになる扇型屋根を店舗・多目的スペース部分に設け、周辺施設と調和し、街の新たな賑わいを作り出す施設となる。
この建築が、陸前高田のまちにとって、産業と人を育むランドマークとなることを願っている。