【NEWS】2022.9.21 UPDATE /「女川町認定こども園及び社会教育施設」新築設計プロポーザルにて、2位となりました!
宮城県女川町に認定こども園と社会教育施設を作る設計プロポーザル。
旧女川第一小学校跡地のこの場所は、山々に囲まれ海に比較的近く、雄大で美しい自然に恵まれた多様な体験ができる場所です。背後に急傾斜の山を背負う地形であることから防災対策が必須であり、この敷地固有の風景と場所には、地域とのアクセスが良く開かれていると同時に、自然に対して安全に開くことが重要だと考えました。
本敷地のレッドゾーン・イエローゾーン内に、防災対策として、緩やかなカーブの待ち受け擁壁を設けます。待ち受け擁壁は自然石を使い、「信玄堤」を参考にして、擁壁と擁壁の間に切れ目を入れ、周りの自然と調和する景観を作り、そこは人の通り道とすることができますし、土砂のメンテスペースともなります。
南側に、地域に開かれた「ふるさと広場」を設けます。「てらみち」が通り、社会教育施設を西側、認定こども園を東側に配置し、屋根をかけた「軒下テラス」でそれらを繋ぎ合わせます。
建物全体は緩やかな円弧が波紋のように広がり、各スペースは広場、軒下空間、庭が置かれ、それぞれのスペースの独立性と全体として一体感を作ります。
こども園は、東側に入口があり、「エントランスホール」から「ひろびろテラス」へ、そして「ふれあいの庭」まで繋がっています。すぐ脇に事務室があり、事務室の窓からは、駐車場、エントランス、園庭、廊下と、施設全体を見通すことができます。
0〜2歳児の保育室は、エントランスのすぐ左側の角にあり、南側の「しずかな庭」に面しています。感染症対策のため、乳幼児の出入口を、玄関とは完全に分けた運用も可能です。
3〜5歳児の各保育室は、扇形に三室を配置し、南西側の「ふれあいの庭」に面しています。3室は独立していますが、移動が可能な建具で仕切り、各室を連続して使用することも可能です。
廊下の中央に、階段状の絵本コーナーを設けます。絵本コーナーからは、裏側の石柱や、桜などの既存樹を残した「おもいで広場」を眺めることができます。また、段差を利用して、園児が落ち着ける、小さな「でん」という空間を設けます。
社会教育施設に隣接する場所に遊戯室とランチルームを設け、可動間仕切りで仕切ります。日曜日は、遊戯室とランチルームを社会教育施設の拡張として利用したり、平日には、園児が和室を利用したり、お互いに拡張し合うことが可能です。夏祭りなど、地域のイベントの際には、セキュリティラインをここに作り、社会教育施設と一体的な利用も可能です。将来、こども園が集会所に転用される場合は、多目的ホールとして利用できます。
社会教育施設は、「軒下テラス」からアクセスします。エントランスから入ると、まず、吹き抜けのエントランスホールがあり、その先に展示スペースが広がり、和室・調理実習室が面して、そして奥には、体育館の様子が垣間見えます。吹き抜けで繋がる2階には、会議・研修室と事務所があります。また、体育館の横にもエントランスがあり、中高生の学習スペース、体育館の待合スペースとなる、ラウンジを設けます。文化財保存庫には窓を設け、来館者が地域の宝を身近に感じることができます。
さらに、敷地のほぼ全体がイエローゾーンにかかっていることから、社会教育施設とこども園の北側の壁には、高さ90cm程度のコンクリート腰壁を全て設けることで、より安全な、フェイルセーフの計画としています。
社会教育施設からこども園まで、軒下空間を円弧状に連続させて、ふるさと広場をぐるりと取り囲みます。各世代の人々が、お互いの活動を見通せるようになっており、一体感を感じながら、生き生きと活動できる場所となります。社会教育施設とこども園という、全く異なる機能が隣り合う中で、誰もが気兼ねなく集える中心となる場所として、軽やかな勾配屋根をかけた「軒下テラス」を作りました。背後には「だんだん広場」があり、待ち合わせや、おしゃべりや、一休みできる場所になります。ここが二つの施設を繋ぐ象徴的な場所になります。
この場所が、女川の街にとって、安全な場の提供、世代の交流を促すランドマークとなることを願い、提案しました。
*高橋茂弥建築設計事務所との共同設計